アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは?
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が良くなったり悪くなったりを長く繰り返す病気です。
遺伝的なアレルギー体質と環境の2つが原因といわれています。
原因は、完全には解明されておりませんがアレルギーだけで起こっているわけではありません。
皮膚の生理学的異常(皮膚の乾燥とバリアー機能異常)があり、そこへ様々な刺激やアレルギー反応が加わって生じると考えられています。
アトピー性皮膚炎の治療方針は、一人ひとりの状態をしっかり把握することから始めます。
アトピー性皮膚炎を悪くさせている様々な要因を見つけ出し治療していきます。
皮膚の乾燥について
アトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚のバリアー機能の異常がよく見られます。
バリアー機能の異常とは、皮膚にある「セラミド」という物質が生まれつき少なく、皮膚に水分を保ちにくく「乾燥肌」となるのと同時に、外界からの異物が簡単に皮膚の中に侵入してしまう状態のことです。
具体的には、アレルゲン(ダニ、埃、カビ、花粉、食事など)、細菌・ウィルス、化学物質、大気汚染物質、紫外線、汗、気温・湿度の変化など、あらゆる外界からの刺激が、皮膚の内部へ到達しやすくなっているのです。
また、衣服の摩擦や掻くことで、皮膚が簡単に傷ついてしまいます。
つまり、アトピー性皮膚炎の患者さんの肌は、乾燥肌で外界からの刺激を受けやすい状態になっているのです。
そのため保湿剤の外用が大切です。
保湿剤による日々のスキンケアも大切な治療です。
スキンケアをしっかり行って いれば、アトピー性皮膚炎になりにくくなります。
もしアトピー性皮膚炎になっても、ステロイド外 用剤をぬるだけでなく、同時にスキンケアをすることで症状が本当に改善します。
アトピー性皮膚炎は乳児は、10歳くらいまでによくなることが多いです。
スキンケアをしっかり行っていれば、アレルギーマーチ(アトピー性皮膚炎の小児が次々と他のアレルギー疾患を併発する事)を生じにくくなります。
また成人も長い目で見れば、いずれ落ちついてくることが多いです。
通院をしなくてもよい時期が来るまで、あなたのアトピー性皮膚炎治療のお手伝いをさせていただければと思っています。
痒みなどの苦痛をコントロールし、日常生活やお仕事をイキイキと行えて健やかな日常を送っていただくことが第1の目標になります。
アトピー性皮膚炎があるから何かを制限しなければいけないのではなく、薬の助けを借りつつも他の人と全く変わらない快適な生活を送っていただければ幸いです。
※当院では、特異IgE抗体価の検査(RAST)を含むアレルギー検査(血液検査)も行っています。
これらの検査を行うことにより、その方のアトピー性皮膚炎の原因が明らかになるということではありません。
治療の参考になるという程度です。
とくにRASTの結果の評価は難しく、症状とは無関係の場合もありますので、RASTの結果だけで安易な食物制限に走ることのないように注意する必要があります。
アトピー性皮膚炎の治療は?
アトピー性皮膚炎の治療は 1. 悪化因子の除去 2. 皮膚炎の治療 3.お肌のバリア機能の回復 4.保湿等によるお肌のバリア機能の維持をあわせて行うことになります。
よく使用される薬は、ステロイド外用薬・非ステロイド外用薬、免疫制御薬、保湿剤、抗アレルギー薬、漢方薬、生物学的製剤等のほかナローバンドUVBなどがあります。
当院では、日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎の治療ガイドライン」に沿った標準的な治療を行っています。
ステロイド(副腎皮質ホルモン)外用剤や免疫抑制外用剤(プロトピック軟膏、コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏)を使用部位や使用法に注意しながら使用しています。
また、痒みをとる作用の高い紫外線治療器エキシプレックス308(ターゲット型ナローバンドUVB)や近年開発された画期的な治療薬であるデュピクセント(注射)やオルミエント(1日1回の内服薬)の治療も行っています。
アトピー性皮膚炎の治療法
1.ステロイド外用剤+保湿剤
ステロイドはもともと体内にある副腎皮質ホルモンと同様の働きをする薬です。
炎症や免疫反応を抑えることが出来る効果があります。
その効果を元に 5 段階に分類されていて、皮膚炎の重症度に応じて薬の強さを調節して使用します。
また、効果の高さと副作用の起こりやすさは一般的に比例しますので、必要以上に強いステロイド外用薬を使わず、「皮疹の重症度」に見合った薬剤を選ぶことが大切です。
全身的な副作用は内服で長期使用した場合のみですが、外用の場合でも長期連用により、皮膚が薄くなる・萎縮する、血管が浮いてくるの等の副作用が出てくることがありますので、注意しながら使用します。
アトピー性皮膚炎の予防には保湿剤の外用が重要です。
保湿剤(へパリン類似物質やワセリン系統)を毎日塗り続けることで皮膚の乾燥とバリアー機能異常を改善でき、皮膚炎をある程度予防することが可能です。
2. 免疫制御薬(プロトピック、コレクチム、モイゼルト)+保湿剤
アトピー性皮膚炎の新たな治療薬として登場した薬剤です。
プロトピック軟膏
プロトピック軟膏は塗り始めに刺激感を感じる方がみえますが、1週間ほどで感じられなくなります。
20年以上の歴史があり、十分な臨床効果の裏づけがあり安定したお薬です。
コレクチム軟膏
コレクチム軟膏は2023年2月から生後6か月のお子様にも使用していただけるようになりました。
プロトピック、モイゼルトは2歳からの使用です。
モイゼルト軟膏
モイゼルト軟膏は2022年6月から使用されている新薬です。
副作用がとても少なくて安心して使用していただけるのが特徴です。
※アトピー性皮膚炎の予防には保湿剤の外用が重要です。
保湿剤(へパリン類似物質やワセリン系統)を毎日塗り続けることで皮膚の乾燥とバリア機能異常を改善でき、皮膚炎をある程度予防することが可能です。
3. 内服薬(抗アレルギー薬)
アトピー性皮膚炎はとても痒いのが特徴の病気です。
痒みが強いと引っ掻きによる悪化を起こしたりします。
痒みが強くて、いらいらしたり十分に眠れない時には痒みを抑える目的で、抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー剤を内服されると良いでしょう。
またこれらの外用剤や飲み薬の併用として、漢方薬の使用をすることもあります。
誰もが持っている自然に病気を治す力(自然治癒力)を高める薬です。
西洋薬はある特定の症状だけに対して即効的な効果を発揮します。
これに対して、漢方薬は内側からゆっくり治してゆくことで複雑な症状に対しても効果がでることがあります。
4.エキシプレックス308(ターゲット型ナローバンドUVB)
紫外線の『免疫の働きを弱める作用』や、『皮膚に色を付ける作用』などを利用した治療方法です。
痛みもなく紫外線を照射するだけで治療を行えます。
照射時間も数秒から数十秒程度と短時間です。
効果を上げるためには繰り返して照射する必要があり、数週に1度でも効果はありますが、週に1回~2回程度の通院が勧められます。
痒みの抑制効果が大変強いことが大きな特徴です。
5.画期的な治療薬 デュピクセント
デュピクセントはこれまで治療に苦労した重症アトピー性皮膚炎の患者様でも大変すばらしい効果を発揮します。
2週間に1回の注射を1~3回することで高い効果を実感でき、16週間後には約70%の方が上記写真の75%以上改善の状態になり、約40%の方が90%以上の改善の状態になるといったデータがあります。
6.画期的な治療薬オルミエント 注射が苦手なアトピー性皮膚炎の患者様へ
オルミエントはアトピー性皮膚炎の画期的な内服薬です。
1日1回の内服で素晴らしい効果を発揮します。
2日目から効果を実感でき、1週間後には約40%の痒みが改善されるとのデータがあります。
内服16週間後には平均して約70%のアトピー性皮膚炎の改善が実感されるといったデータがあります。
7. 非ステロイド系消炎剤(外用剤)
炎症を抑える力は極めて弱く、ステロイドに代われるものではありません。
ステロイドの副作用が出やすい首や顔に使用されることが多い薬です。
ただし、接触皮膚炎(かぶれ)を生じることもしばしばあり注意が必要です。